今回は4名のマイナビ進学会員である高校生にお集まりいただき、進路選択にまつわるお悩みを聞いた。現役高校生の進路選択に役立つ情報とは何か?高校生に届けるべき情報やアドバイスは何なのかを探っていく。
▼参加者
▽Sさん(女子・高1) 好きなモノ:お笑い
幼少期からお笑い好きで、好きな芸人は『NON STYLE』や『ナイチンゲールダンス』。なりたい職業はあるが、その夢を叶えるための大学が決まっていない。
▽Aさん(女子・高2) 好きなモノ: 読書
オススメ本は『同志少女よ、敵を撃て』。最近読んで感銘を受けた。総合型選抜と一般選抜の対策を同時進行中。どこに力点を置いて勉強するかの時間配分に不安がある。
▽Nさん(男子・高2) 好きなモノ:読書
わかりやすいシンプルな本を読むのが好き。進路に関する悩みは、行きたい大学が定まっていないこと。理系と決めているが、学部選びにも悩んでいる。
▽Iさん(女子・高2) 好きなモノ:読書/音楽
小説も漫画も好き。『ONE PIECE』を一巻から読み始めたところ。将来は管理栄養士と考えていたが、調べていくうちに他職種にも興味が湧き、逆に絞れなくなった。
上級学校の担当者は、進路決定に悩む高校生にどんな情報を届けるべきか?
――進路決定の流れは主に、将来の仕事を検討し、その職業をめざせる学部を絞り、志望校を決めるという3ステップかと思います。最初の職業検討に悩んでいる人はいますか?
Nさん:仕事は理系職と決めていますが、化学や生物など幅が広すぎて絞りきれていません。自分が何に向いているかがわかりません。
Iさん:もともと管理栄養士に興味がありましたが、調べれば調べるほど想像以上にいろんな仕事があり、逆に興味の対象が広がってしまい絞れない状態です。
Aさん:海外で働きたいという漠然とした目標はありますが、それを実現するための手段が見つかりません。海外には具体的にどんな仕事があるのか?海外で働いている人が周りにいないので海外就業者の体験談を聞いてみたい。
――特にAさんは職業検討の初期段階にあるのかもしれませんね。多くの学校は広報媒体でめざせる仕事やOBOGメッセージを掲載しています。マイナビ進学でも数百種類の職種を紹介していますが、そういった情報をチェックしたことはありますか?
Aさん:見たことはありますが、仕事は遠い夢すぎて詳細なイメージができません。定員もあるし、大学卒業後にその仕事に就けるかもわかりません。自分の実力もわからないので夢との距離を感じます。
――Sさんはなりたい職業が決まっているようですが、どのように決めたのでしょうか?
Sさん:小さい頃からお笑いが好きだったのでエンタメ系の裏方の仕事に就きたいと考えていました。特にラジオ好きでラジオの放送作家になるのが夢。自分の好きなことから職業を決めました。
――IさんとNさんは職業を調べれば調べるほど選択肢が増えて逆に困っていそうですが、「こんな情報があったら決められそう」というのはありますか?
Iさん:同じような仕事はあっても、それぞれニーズや対象が違うので、似ているけどココは違うという点を教えてほしい。
Nさん:現実的な話になりますが、それぞれの職業の収入が気になります。収入によって職業決定も左右されると思います。海外大学への進学も視野に入れているのですが、海外大学出身者の職業図鑑のような資料も見当たらず将来のイメージが湧きません。
――学部選びについてはどうでしょうか?
Aさん:中学1年の頃から国際系と決めていました。英語が好きで大会に参加したり、ニューヨークにある国連を訪問したりした経験から国際教養学部を志望するようになりました。
――学部が決まっていると志望校は決めやすいですね。
Sさん:私は放送作家志望なので学部はメディア論と決めていますが、その職業に就けなかった時のために、その他の選択肢もある文学部に行ったほうがいいのか、それとも専門学校に進んだ方がいいのかと悩んでいます。
Iさん:もともと栄養系の進路をめざしていましたが、海外や国際系学部にも興味が広がり、今は栄養系一本に絞っていいのかなという不安があります。
――みなさん、1つの道に絞り切ることに不安を感じているのですね。進路決定はいずれしなくてはなりませんが、決めきるために不足しているのは何だと感じますか?
Iさん:進学情報誌もインターネット検索もあるので、情報は足りていると思います。ただ自分だけの判断を信じきれないところがあります。
Aさん:親は誰もが知る有名大学に行ってほしいという思いが強く、上位ランクの大学だったらどの学部でも良いと言います。私の行きたい国際教養学部は専門的な知識を養えないと思われていて、自分としては情報収集も十分で納得いっているのですが、親の理解が足りないように思います。
Sさん:私の住む県には国立大と私立大学があります。自分が進みたい学部は後者の私大にありますが、新設学部なので周囲からは歴史のある学部を勧められることが多い。新しい学部の情報がもっと広まってほしいなと思います。
Nさん:進路に関しては親と意見がぶつかっています。親はいい大学に入ってそこから学部を選べば良いと言いますが、僕の考えは逆で、まずは学部を絞ってからその学びに相応しい大学を探したいと考えています。
保護者や高校の先生は進路決定の重要なサポーター
――高校生のみなさんには情報があふれすぎていて、一つに決められない。自分が何に向いているのかも含め、自分での判断も簡単にはできない。相談相手として頼るのは両親だけれど、保護者向けの情報が不足している。保護者には少なからず固定観念もあるから、自分と同じくらいの情報量を両親にも持っていてほしい。進路決定のお悩みとしては、そんなところでしょうか?
Iさん:私の両親は進路については私任せですが、親の方にも情報があったらありがたいし、自分も決めやすいと思います。前提として同じぐらい進路を調べたり知っていたりじゃないと、話が平行線のままだとも思います。
Aさん:親のいう意見も一理あり、ブランド力のある大学の方がちゃんとした職業に就けるのかもしれません。ただ、親も情報がたくさんあると混乱してしまうので、私は親に情報を持ってほしいというより、親を説得できる内容を、自分が情報として持っていたらそれで良いと思っています。そのために頼っているのは高校の先生です。
――親に知っておいてほしい情報はありますか?
Nさん:逆に親から調べておいてと言われることは、奨学金制度や寮のことです。
Sさん:親が東京の大学を知らず、地元の国立大学を勧められます。地方に住んでいると首都圏の大学の情報はあまり伝わってこないという印象があります。
Iさん:大学の学部で学べることを知ってくれていたら、親と進路のことについてもっと話せると思います。また、親は自分が知らない自分を知っているので、「あなただったらこういうのが向いていそう」というアドバイスがもらえたら進路決定の指標になると思います。
Nさん:親には、この学部卒だったらこの仕事というのを知っていてほしい。自分はこの学部はこの仕事に就けると思っているのに、親からそんなことはないと否定され、情報の行き違いで衝突が起きてしまいます。
――相談相手が学校の先生だとしたら、どのようなアドバイスをしてほしいですか?
Nさん:自分がどの教科と相性がいいのか教えてほしい。理系教科はどれも成績が同じくらいなのですが、授業での自分の態度や取り組みから、自分がどれにあっているか見極めてほしい。
Aさん:志望学部である国際教養学部に進んだ先輩が高校生の時にどんな科目が得意だったのか、どのような課外活動をしていたのかを知りたい。得意なことの先に学部を決めたのだろうから参考になると思います。
Sさん:入試寄りの話になりますが、高2の選択科目を決めないといけないので、生物選択で入れる学部など入試の時に使える科目が知りたい。志望学部に入るための科目などの情報は、高校の早い段階で教えてほしい。
――Aさんの、先輩の得意だった科目を知りたい理由は何でしょうか?
Aさん:一般選抜と総合型選抜の2つの入試形態の対策をしていますが、先輩の情報を参考に、どちらの方が合格しやすいかを知りたい。偏差値が高い大学の総合型では、いろんな活動をしていないとダメなのかなと思うし、自分のレベルも不明で、ライバルとどのように勝負すればいいのかがわからない。一方、一般入試はコツコツ勉強すれば受かる可能性が高いだろうけど、総合型も諦めきれない。ただ、私の通う高校は進学校のため総合型選抜が推奨されていません。総合型選抜のための指導はなく、先生に先輩の合格理由を聞いてみても、性格が大学とマッチしていたのだろうというあいまいな答え…。総合型で入学した先輩が高校時代にやってきたこと、受賞歴、志望書の内容などをそのまま見てみたい。
Sさん:私が通う高校では総合型選抜が推奨されています。合格者のクラブ活動、委員会、ボランティア、勉強内容が毎年配付されていて、それらを参考にできるので総合型選抜を選ぶ人が多いです。
――各大学は、「この入試形式はこんな人にオススメ」という説明も加えていたりします。それだけでは、自分がどの入試を選べばよいかわからない?
Aさん:そうした情報は大まかすぎるし、「こんな人」と言ってもレベルの差があるので参考になりません。総合型選抜の応募資格の評定平均も調べてみましたが、4.0以上としか記載されておらず、ネットからも合格基準について詳しい情報は得られません。やはり自分に合った入試を選ぶのは難しいです。
Iさん:もともと学校推薦を考えていましたが、私の高校も最近、総合型選抜を推奨していて私自身も総合型も視野に入れるようになりました。過去の先輩の学力やボランティアの実績など先輩の話が聞けたらありがたいと思います。
――“自分に合った入試”とは受かりやすいかどうかということですか?
Aさん:自分の得意科目が入試科目とあっているかを知りたい。一般選抜の入試科目や配点がわかっていても、併願もするので併願校それぞれの傾向と対策を立てておきたい。例えば、英語一科目入試は英語が得意な人が受験するから競争率が高く、他の科目を使わないのが無駄になってしまう気がします。国公立や私立の2次試験は入試科目が異なるため、それぞれの科目をどれくらい勉強すればいいのかのポイントが知りたい。
Sさん:共通テストは模試の判定結果から自分のレベルはわかりますが、総合型選抜は作文や面接が合格圏内にあるのかどうかの指標がないから難しい。
――自分の適性はわかっているけど、受験となるとライバルも同じ状況で臨むので、合格までの現在地や最適ルートを知りたいということですね。そのほか、ほしい情報はありますか?
Iさん:私も同じ科目で受験できる大学を知りたい。同じ大学をめざすライバルのことも知りたい。曖昧なことが多いと不安になります。
Aさん:総合型と一般の両方の受験をした人の割合や、総合型のみ合格、一般のみ合格、両方とも不合格となった人の割合も知りたいです。
――最後に再び進路・キャリアの質問になりますが、自分のキャリアや人生についてはどれくらい先まで考えられていますか?
Nさん:すごく親しい友人とはよく将来について話をします。高校卒業後の大学や就職、老後のことまで延々と。お互い悩んでいるので、どんな会社に行きたい、どんな方向に進みたい、などいろんな話をしています。
Iさん:私の通う高校は総合学科で、1年生の時に老後までのライフプランを考える時間がありました。でも直近の進学先が決まってないので、将来の職業は曖昧です。
Sさん:私はなりたい職業が自分の好きなコトの延長線上なので、それはハッキリしています。キャリアプランではないですが、この人とこのくらいの年齢の時にこんな仕事をしたいという妄想は持っています。憧れの放送作家さんの20代の体験や30代の仕事などの経歴を、自分もそのまま辿っていきたい。
Aさん:私は大学卒業直後の23歳までしか想像できません。キラキラした大学生活のイメージは持てていますが、漠然とそのあと日本にはいないだろうなと思う程度で、卒業後に何をしているのかが予想できません。でも、なりたくない像は考えます。電車で疲れている人とか見るとこういう生活は嫌だな、自分は自分らしくありたいなと思う。
――将来やりたいこと考えることも大事だけど、やりたくないことを考えることもヒントになるのかもしれませんね。今日はみなさんから貴重な意見を聞くことができました。ありがとうございました。
~ 座談会を終えて ~
真に迫る情報で高校生の進路決断を支援する必要
今回の座談会のテーマは、高校生の進路選択の悩み・課題に迫ることでした。高校生が進路を決める際に、何に悩んでいるのか?どんな情報が不足しているのか?大学関係者からすれば、どんな情報やアドバイスを与えてあげればよいのか?それを探ることが目的でした。事前に行った定量調査では、学力不足や勉強の仕方がわからないといった悩みが上位に。今回のインタビューではその具体的な中身が見えてきました。先輩の勉強方法や合格体験談という情報にアプローチできることが少なかったり、詳細な合格者データ・評価基準などが(特に人物評価では)曖昧であったりして、自分の勉強方法等に不安を抱いていることが実情のようです。
また、同じく事前の定量調査では将来の仕事や、自分の能力・適性がわからないという悩みも多く回答が寄せられていました。聞くと、基本的な情報収集はできるものの、本当にそれを選んでよいのかという不安があるようです。高校生の内に多種多様な経験を積んで自己形成ができていれば納得のいく自己決断ができるかもしれませんが、なかなか難しいもの。少なくとも、似た仕事同士の細かな違いや、その職についた方の道のりや収入の実情など、より真に迫った情報があれば決断へと1歩近づくのかもしれません。また進路検討の際には多くの高校生が保護者を頼るものですが、持っている考えや情報の違いにより、決断に至らないケースも。各学校にとっては、時代の変化も含めた情報提供を、保護者に向けてより一層丁寧に行っていく必要があるのかもしれません。(研究員 青木湧作)