2023年最後の12月座談会のテーマは「高校生のトレンド」。マイナビ進学総合研究所にて11月下旬に実施した高校生トレンド調査(有効回答者数3,191名)の結果を踏まえ、回答者のうち4名の現役高校生にご協力いただき、それぞれの結果の感想やトレンドの実態について話を聞いた。
▼参加者
Iさん(男子・高1) 長崎県在住
Aさん(女子・高1) 三重県在住
Tさん(男子・高2) 福岡県在住
Sさん(女子・高3) 東京都在住
※コラム中の質問と結果ランキングは全て「2023年高校生のトレンド調査」より。これらの結果を見ていただきながら、自身の回答も振り返ってもらった。
SNSはタイパ重視。使い分けてサラッと流し見派が多数。
(質問)一日の中で一番利用しているSNSを教えてください。
――SNSそれぞれの使い分けは行っていますか?
Sさん:InstagramやTikTokは、動画を見て気分転換したい時に使っています。旧Twitterはニュースや情報が流れてくるので、最近の出来事をチェックする際に利用しています。
Iさん:主にInstagramを使っています。友だちのストーリーを見たり、メッセージ機能を使ってやりとりしたり。友だちとの会話はLINEが多いです。
――Sさんは友だちとの交流にSNSは使いますか?
Sさん:友人のなかにはストーリーを上げている人はいますが、映えることを意識したものばかりでつまらないのであまり見ていません。
Aさん:友だちのストーリーやリール動画を見る用にInstagramを使っています。
――IさんやAさんは、旧Twitterを使っていませんね。
Iさん:旧Twitterはトレンドや流行をたまに確認するくらいで、ほとんど利用していません。
Aさん:必要性を感じないので全く使っていません。
――かつては、ゲームだったらゲーム雑誌、ファッションだったらファッション誌などから情報を得ていました。今は、みなさんの流行のソース源は何ですか?
Sさん:ファッションにしても言葉にしても、流行っているものはすべてTikTokやInstagramでわかります。
Iさん:私は流行を早く知りたいタイプではないけれど、友だちが話しているのを聞いて、TikTokで確認しています。
――SNSそれぞれに、どんな印象を持たれていますか?
Sさん:InstagramもTikTokも流れてくる情報はほとんど同じ。Facebookは年配の方が使っているイメージです。旧Twitterは独り言をつぶやく、思っていることを嘆く場所。インスタは自分の“映え”を共有したい!みたいな印象があります。
Iさん:学校の先生の情報を調べてみるとFacebookだけが上がってきます。TikTokはコメント欄を見ても若い世代ばかり。TikTokは流行のチェック、Instagramは友だち関係と使い分けています。
――大学や専門学校のSNSアカウントはチェックしていますか?
Sさん:志望校は決まっていますが、正直、学校のSNSはスルーしてまったく見ていません。志望校の情報は、WEBサイトで調べられるので十分です。
Iさん:受験情報やオープンキャンパス(OC)情報は高校専用のネットワークから見たりしています。友人や学校から確認されると嫌なので、Instagramのサブ垢で学校アカウントをフォローしています。でも、大学の学園祭や学生生活等の日常をたまに見てみようかなくらいのテンション。YouTubeの公式動画も見たりしますが、10分以上あると全部見る気にはなりません。軽く流し見できるほうが良いです。
――別の調査でも進学情報誌や進学情報サイト、学校HPはチェックしているが、それらに比べるとSNSはあまり見ていないという結果が出ていました。SNS広告はどうでしょうか?
Aさん:学校アカウントのフォローはしていませんが、Instagramで広告が流れてくることがあります。自分がめざす分野だったり、知っている大学だったり、OC情報だった場合は、見に行くことはあります。
(質問)Eメールを使う際の使い道を教えてください。
――連絡手段の主流はSNSやLINEですが、「友人や家族とのコミュニケーション」でEメールが使われているとは想定外の結果でした。Eメールで何を話しているのですか?
Aさん:LINEが使えない祖母との日常会話です。
Sさん:学校からの連絡はEメールで届くことが多く、そのまま親に転送できるので使っています。親も会員登録など見る専門でEメールアドレスを使っています。
Iさん:お世話になった中学校の先生に連絡する時に使います。
――「メルマガや案内の受取」もみなさん回答されていました。
Aさん:一回登録するとずっと届くので、気になるのだけ見てあとは消してしまいます。
Sさん:Eメールはネット通販の情報や大学パンフレットの資料請求で使っています。でも、志望校からのメルマガはしっかり読み込んでいます。高2の冬、気になる学校のメルマガ登録をしました。
Iさん:アンケートサイトの登録用に使っています。特典がほしいものだったりすると、アンケート回答しています。
――メルマガには文字量の多いテキストメールと、画像や背景があるリッチなメール(HTMLメールの意)がありますが、メール形式によって読んだり読まなかったりしますか?
Sさん:写真があると大学の雰囲気がわかり助かりますが、志望校のみ登録しているので、多少テキストばかりが多くても気になりません。テキストのみでも読んでいます。
部活に入る理由、入らない理由。
(質問)あなたは学校の部活に加入していますか
(質問)あなたは学校外の活動を行っていますか。
――Iさんは部活に入らず、校外で英会話を習っているようですが、部活に入らなかった理由は何ですか?
Iさん:面白そうな部活もあったのだけど、時間を取られるし、勉強との両立が難しかった。友だちもほとんど部活に入ってないし自分も入らなくていいやと思って。
――その大切な時間でしたいことは何ですか?
Iさん:特進コースに所属しているので放課後に専門的な授業を受けています。校外活動で英会話を選んだのは、英語が好きで、将来英語は必要になると思ったから。
Tさん:私が部活に入らなかった理由は高校に興味のある部活が見つからなかったから。もしあれば入っていました。
――逆に、学校での部活の魅力は何だと思いますか?高校生が部活動に対して抱く価値観が知りたいです。
Iさん:自分が探求したいことを極める力。何かしらの能力を身につけられて他の人との差をつけるきっかけにもなると思います。
――校外活動や習い事、YouTubeなどのネットからでも、今の時代は何でも技術を身につけることはできると思います。学校内で行う部活のメリットを考えたことはありますか?
Iさん:同じ学校の友だちとの団結やつながりが魅力。部活のつながりが一生の関わりになると聞くし、有意義な時間なのかなと想像します。
Aさん:英語部に入っていますが、あまり活発な活動はなく予想と違いました。高校入学当時は中学と同じ運動部でしたが、勉強との両立ができなくて辞めました。でも、部活は本当に今しかできないことだから、やっておけばよかったという未練があります。
Sさん:私は所属していた軽音部から多くのことを学びました。団結力と同時にチームの難しさを体感したり、舞台に立つ緊張感を味わったり、それを乗り越える力だったり、部活に入って良かったと思っています。
――Sさんは入学してすぐに入部を決めたのですか?
Sさん:高校は勉強しようと思い入部するつもりはなかったですが、先生から「大学入試の面接で何も話せないのは寂しいよね」と言われたことと、友達に誘われたのもあって入りました。
今年の推しは?高校を卒業してやってみたいことは?
(質問)今年、一番「推し」たものを教えてください。
――みなさんの推し理由を教えてください
Iさん:私は『薬屋のひとりごと』です。普段はライトノベルは読まないのですが、友だちから勧められて原作を読みました。そのミステリー要素に、私としては珍しくはまりました。アニメ化されてうれしいです。
Aさん:私は『BE:FIRST』ですね。オーディションから追っかけ、完成形のグループよりも応援したくなる要素がたくさんあります。泣いたり笑ったり、メンバーの仲の良さだったり、いろんな側面を見てきたので親近感が湧いています。
Sさん:『HKT48』出身でアイドル3回目の『LE SSERAFIM』のメンバー、(宮脇)咲良ちゃんが推しです。言葉がわからないまま韓国に渡り、韓国のアイドルオーディション番組を経てデビューを果たしました。自分の意思を貫いているところに惚れています!
――周りのお友だちで流行っている王道はありますか?またその共通点で思い当たることは?
Aさん:共通点はK-POPや旧ジャニーズなどアイドルを推していることが多いかな。
――今回の調査でも旧ジャニーズの『なにわ男子』や『Snow Man』は上位にランクインしていました。
Sさん:オーディンション番組出身の女子アイドルグループ『NiziU』も人気があります。友だちと「この子、頑張っているからいいよね」とよく話しています。
Iさん:アニメ作品を例にすると、起承転結の「転」の変化が激しいストーリーが共通点のように思います。『呪術廻戦』も話の転換が大きな作品。主人公がそれを乗り越えていくところにみんなハマっています。
(質問)高校卒業後にやってみたいことを教えてください。
――2022年の調査結果も「アルバイト」「留学」「車の免許」「一人暮らし」に集中していました。2023年も概ねあまり変わっていない印象ですが、みなさんのご意見は?
Aさん:だいたい同じです。やはり免許や一人暮らしなど、ちょっとだけ大人への憧れがあると思います。
Iさん:免許を取っていろんなところに遊びに行きたい。バイクの免許は上手く扱えないかなと思って車の免許にしました。家族が体調悪いときに送ってあげることもできるから。
Tさん:私も高校卒業したら車の免許を取って遠くまでドライブしたいです。
――大学生のイメージは?
Aさん:もちろん勉強もするけど結構、自由なのかなという印象。大学生活は“人生の夏休み”という言い方も聞いたことがありますが、自分のしたいことをする分、自分で責任も取っていくイメージです。
Iさん:やっぱり“自由”という印象が大きい。高校の先生も「ここを乗り切ったら人生の夏休みなんだから」と言われて勉強しています。大学生になって自分の時間を持てることが楽しみです。
――Sさんはもうすぐ高校卒業ですね。大学入学後にやりたいことは?
Sさん:一人暮らしはしてみたい。ピアスやヘアカラーもやってみたい。今は受験勉強中で自分の思い通りにいかないことが多く、早く大学生になりたいです。大学生活は自由でサークル活動も盛んな印象。パソコンを使いこなさなければならないイメージもあり、今はパソコンが使えないからちょっと不安です。
~ 座談会を終えて ~
S N Sの使い分けがさらに明確に。推しと部活動に求める、人とのつながりや変化。
Facebook、TikTok、 Instagram、X(旧Twitter)の主要4つのSNSの使い方やイメージは昨年のトレンド調査とほぼ同じでしたが、トレンドの情報発信源として『TikTok』への信頼が絶大でした。また、登録している志望校の「メルマガ」はテキストが長くてもしっかり読んでいるとのこと。これは前回のDM調査でも同様の結果で、自分宛に届く情報に関しては読み込む傾向があると言えるでしょう。SNSの広告は、志望分野が同じ学校であれば見に行くという声も聞かれました。
また、今の高校生の部活加入率は約半数ですが、その理由は勉強との両立が難しいから。一方で、仲間と団結する、ともに成長するという点に魅力は感じる様子。“推し”に関しても、オーディション番組出身のアイドルやアニメのヒーローが仲間と苦難や挫折を乗り越え夢を叶えていく姿に魅力を感じるようです。強力な主人公がまっすぐ大活躍するようなストーリーよりもそうした展開に人気が集まるのは、現代の多様性社会の中で、それぞれの価値観を大事にしたり共感が重視されたりする様子が背景にありそう、というと言い過ぎでしょうか。また、部活動の魅力は理解しながらも、“自由な”大学生活で自分のやりたいことをやることが勉強の大きなモチベーションになっているようです。(研究員 青木 湧作)